冷淡
「そう冷淡じゃ張り合がない。教えてくれなら、教えてくれと判然はっきり云うがいい」
「誰が云うものか」
「云わない? 云わなければこっちで云うばかりだ。ありゃ、島田しまだだよ」
「座敷でも開あいてるのかい」
「なに座敷はぴたりと締ってる」
「それじゃまた例の通り好加減いいかげんな雅号なんだろう」
「雅号にして本名なるものだね。僕はあの女を見たんだよ」
「どうして」
「そら聴ききたくなった」
「何聴かなくってもいいさ。そんな事を聞くよりこの筍たけのこを研究している方がよっぽど面白い。この筍を寝ていて横に見ると、背せいが低く見えるがどう云うものだろう」
「おおかた君の眼が横に着いているせいだろう」
「二枚の唐紙からかみに三本描かいたのは、どう云う因縁いんねんだろう」
「あんまり下手だから一本負けたつもりだろう」
「筍の真青まっさおなのはなぜだろう」
「食うと中毒あたると云う謎なぞなんだろう」